移動美容車から見えてくるビジネスの機能と本質の違い

美容院

移動美容車(室)ってご存知ですか? 介護施設などを訪問して、その場でシャンプーやカラーリング、カットのサービスを受けることができるサービスです。

一説によれば、コンビニより数が多いとも言われる美容室。首都圏での競争は激しさを増しています。夫婦で経営しているような小規模な美容室は、発想の転換の必要性を説かれたところで対応できるリソースもなく、ある程度の規模をもってブランド展開している美容室であっても、妙案など簡単に頭に浮かぶものでもないでしょう。市場の環境だけを考えれば、状況はかなり厳しいのではないかと思います。

施設を訪問し、サービスを提供している美容室もありますが、ただの美容室機能の配達では市場はすでに反応しなくなっています。発想をどのように転換するのか、その切り口を見つけることが重要です。

少し前の記事になりますが、2015/08/31付けの日経MJ(流通新聞)20面に、大阪を中心に美容室を展開する『デレディール』の移動美容車についての記事が掲載されています。

記事によれば、この移動美容車は『高齢者のおしゃれ心を大切にしたい』をコンセプトに、高齢者向けの介護施設を周り、サービスを提供しています。人が訪問して、皆と同じようにカットをするという『機能』を提供しているのではなく、美容室ごと近くの駐車場まで運んでいき、施設の高齢者たちに『近くのサロンに行っておしゃれをする』という体験・行動を提供しているのです。このサロンの経営者の想い、こだわり、優しさがとても伝わってきます。

この事例からは、高齢者向けだから移動美容車・デリバリーという単純な発想ではなく、広く女性にサービスを提供するためのツールのひとつとして、この車が誕生したようにも感じます。美容室の真の価値は、お店に来た人の髪を切ることではなく『美への想いを充足させること』なのでしょう。となれば、デリバリー車の登場は必然だったのかもしれません。

移動美容車は、スタッフさんとの会話も楽しめる空間であり、美容室そのもの。温かいコミュニケーション、スタッフさんとのふれあいは、施設にいる高齢者の楽しみの一つにもなるでしょう。

美容室のサービスを、美容室として売るだけでは成長はありません。美容室も『髪を切る』『髪を染める』という機能を提供するだけでは済ませられないということです。コンセプトを広く『女性の美への想い』とすることで、このような新発想が生まれたのでしょう。

目先の課題で視野がせまくなりがちな競争社会ですが、規模の大小に関わらず、あなたのサービスの本質、原点、価値をもう一度考えることで、あなたが進む道・戦略が明確になってくるでしょう。迷わずいきましょう!

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アタマーケ・ラボ & 起業18フォーラム代表。2007年、集客支援をスタート。テレビやラジオ、雑誌などマスコミにも多数登場し、独自の脳マーケティング理論・集客・高単価セールスメソッドを公開。経験・実績に基づいた、わかりやすいセミナー・ノウハウの解説、コンサルティングには定評がある。
About 新井 一
アタマーケ・ラボ & 起業18フォーラム代表。2007年、集客支援をスタート。テレビやラジオ、雑誌などマスコミにも多数登場し、独自の脳マーケティング理論・集客・高単価セールスメソッドを公開。経験・実績に基づいた、わかりやすいセミナー・ノウハウの解説、コンサルティングには定評がある。